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社会損失から最適な人流制限割合を計算する試み

1.政府の人流制限は的確だったのか

 先日の蔵前技術士会で「人流制限割合による社会損失の試算」というテーマで15分お話しました。

 これは山梨県品質工学研究会のテーマとして5月から進めてきた研究の中間発表です。


 要は緊急事態宣言、まん延防止等重点措置、あるいはメディアからの感染情報発信などによって人流が減少すれば、感染が減ることで人命や医療費などの損害、損失が減る一方、人流が減ることで、飲食や観光、交通産業を中心に生産量が減少し、経済的な損害、損失が増えます。

 人流を自由自在にコントロールするのは、なかなか難しいわけですが、人流を独立変数として、それによって増減する感染損失と産業損失を従属変数とすれば、その関係性を定量化することは比較的容易と思われ、損失の総和が最小となるポイントが最適な人流ということになります。


 私が専門とする品質工学の中に、各種の生産パラメータをモデル化して損失が最小になる工程を算出するオンライン品質工学という分野があり、例えば「工程診断」では、診断間隔を大きくすると診断費用(一種の損失)は少なくなる一方で診断の合間に故障が増えて損失が発生し、2つの金額を合計した損失が最小になる点が最適な診断間隔と算出します。


 今回の試算はここから思いついたもので、以下のような仮定を設定しました。


2.試算の前提と仮定

(1)産業損失

 人流制限0であれば損失ゼロ、制限100%だと該当産業が生産する付加価値総額が損失となる直線的な関係と想定し、飲食産業と観光産業、興行産業について2019年と2020年を比較して減少した付加価値額を試算しました。

(2)感染損失

 感染者数は厚生労働省の発表を整理したこちらのデータを使い、https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000716059.pdf

生産年齢外の感染者は医療費、公的機関の管理費用、生産年齢の感染者については感染期間中に生産したと想定される付加価値を加えました。

 先日の講演ではもっと具体的な数値も公開しました。

 死亡者の損失は、交通事故を起こした時の平均賠償額とされる2000万円を使いましたが、議論のあるところでしょう。

(3)人流減少率

 状況ごとに平時に対する以下のような人流割合を想定し、昨年平均で平時の40%としました。どこかにデータがありそうですが、私の感覚にすぎません。

・ロックダウン:90%
・緊急事態宣言:50%
・まん延防止:25%
・単なる自粛:15%

3.暫定的な試算結果

 現時点のグラフを下に示します。左は全く制限しなかった場合の感染損失が昨年の16倍になると仮定した試算、右のグラフは同じく100倍になったと仮定したものです。

 右のグラフでは昨年実績あたりが損失最小になりますが、左のグラフだと損失最小は人流制限10%あたりになります。

 多くの数値に裏付けがないため、これをもって的確な人流制限割合を確定するには無理があります。試算のコンセプトは間違っていないと思いますので、関連する試算項目、特に感染および人流制限によって発生する損失で見逃している項目と、より正確な数値を入れることで、試算の精度をあげていくためのたたき台という位置づけです。


 皆さんからの有益な情報提供をお待ちしています。

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