中小製造業の技術経営(その7 環境分析)

1.戦略策定における環境分析の意義


 図1に示した中小企業が事業戦略を策定する手順で前回は企業理念と事業ドメインの確認もしくは設定まで説明しました。

 これに続く外部、内部環境分析は非常に重要なプロセスです。孫氏の兵法でも「敵を知り己を知れば百選危うからず」とされ、しっかり内部環境、外部環境をすれば戦いに負けることはないと教えています。逆に周囲の環境や自社の強み、弱みを知ることなく、思い付きで戦略を立てては、その後いかに奮闘しようとも事業の存続はおぼつかないことになります。

 以下、中小製造業の環境分析について具体的に考察します。


2.外部環境分析

 外部(自社の外側)環境はマクロ環境とミクロ環境に分かれます。ミクロ環境は自社事業分野を対象とし、マクロ環境はそれに関わらない一般分野が対象で、PEST(Politics内政・外政、Economy産業全般、Social社会情勢・傾向、Technology科学技術全般)の観点で整理します。

 すぐ分かるように、マクロ環境はどの企業が分析してもほぼ同じになりますが、仔細に作業すると項目はほぼ無限にありますから、自社に全く関係しそうにない項目は手を抜くべきでしょう。例えば子供用品を作っている企業にとって人口動態、教育制度などのマクロ動向は事業戦略と密接に関係しますが、裁判員制度の動向はほとんど関係がなく、ここを深く分析するのは時間の無駄です。

図2.ポーターのファイブフォース

 ミクロ環境分析では自社が属する業界の周辺を整理します。市場、技術、競合が主要な項目となります。技術は直接密接に関係する分野だけでなく、ざっとで良いので間接的将来的に関わりそうな分野ついてもアンテナを伸ばしておきます。  競合分析においては、単なる同業他社の調査にとどまらず、図2のポーターのファイブフォース(1.同業他社、2.買い手:販売先、3.売り手:部品/材料供給者、4.新規参入、5.代替製品)観点で調査、整理しておきましょう。これらの中でも4,5は見逃していることが多いので特に注意が必要です。


3.内部環境分析

 内部環境とは自社そのものです。次のような項目別に市場要求や他社と比較した場合の7段階評価と特徴を整理します。

  • 経営者、ブランド力、技術力、営業、販売力、顧客対応力、国際性、コスト力、品質力、生産能力、リードタイム(設計、生産、納入)、財務力、知的財産、立地、リーダーシップ、社員のモチベーション、環境対応、企業倫理。

 この分析時ついでに自社のコアコンピタンス、すなわち最も価値のある競争力の源泉についても考えてみましょう。前回の理念にも関連しますが、自社が事業を継続できているのは「この力」があるからだ、と思われる項目です。「うちにそんなものはありませんよ。頼まれたものを作っているだけです」と謙遜する経営者もいますが、もしそれが本当ならとっくに淘汰されています。自社に注文が来る何らかの理由があるので、そこは一度しっかり判断して社員とも共有し、大事にキープ、強化しておきましょう。弱点を克服する努力も悪くないですが、それによって業績を上げるのは並大抵ではありません。多少の弱点には目をつむり、強みをさらに強化する方が投資効率の良いことが多いものです。ドラッカーも「強みに注力せよ」と教えています。


4.VRIO分析で自社の強みを評価する

 何が強みなのかを考える際にVRIOの観点が役に立ちます。これは強みの程度がVRIO(Value, Rarity, Imitability, Organization)の順で強いことを示しています。

(1) Value(価値):自社の特徴に価値があることは前提です。価値のない特徴は強みになりません。

(2) Rarity(希少性):価値があっても、他に同様の特徴を持つ企業がたくさんいては強みが半減します。希少であるほど強みとなります。

(3) Imitability(模倣困難性):希少な価値でも簡単に真似ができては強みになりにくいものです。利益が低かったり市場が小さいうちは独占できても,儲かるとなると新規参入が増えてくるのが世の常です。もちろん特許権で模倣できなくするのも有効です。

(4) Organization(組織能力):なんだかんだいっても製品や技術は真似されます。非常に真似しにくいのは組織能力です。コアメンバーは引き抜き可能ですが、組織=社員全員を引き抜くわけにはいきません。時間をかけて築き上げた希少で価値ある組織・風土が最も競争力が高いのです。


 次回は、環境分析の結果を事業戦略に反映させる方法について解説していきます。


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