中小製造業の技術経営(その4 小規模であることの問題)
1.製造業の規模が小さいということ
前稿では中小製造業の規模が小さいことによるメリットを記述しました。企業経営にあたっては不利な状況を嘆くのではなく、ドラッカーが示すように「強みにフォーカス」することが大事です。
その一方で、当然ながら大企業に対して不利な面もあります。経営者は当然認識していることですが、本稿ではこの部分を一度整理してみたいと思います。
2.中小製造業の問題1: リソースが少ない
リソースは「ひと・もの・かね」で表されますが、いずれも小規模企業は大企業に比べて少ないことは「小規模」の意味そのものです。
いずれも「できること」が限定されるという問題に帰着します。従業員が少ないことは生産力が小さいことを意味し、設備が少ないことは生産量ならびに生産品目が限られます。資金が少ないことは新たに大きな投資が難しいことになります。
これらは、現在の生産を継続するには支障がありませんから、小さな改善を積み重ねて少しずつ利益剰余金を積み増し、それを使って機会を見ながら人員や設備を増強していくことになります。
「現状維持」という戦略もあるのですが、競合他社が進歩する中で「維持」は相対的な「後退」を意味します。限られたリソースをフルに活用して、成長戦略を描く必要があります。
3.中小製造業の問題2:仕組みが整っていない
これは絶対ということでもないのですが、社内の決まりごとが明確でないことが多いものです。中核プロセスである生産周辺は比較的しっかりしていても、技術管理、事業企画、営業、広報、宣伝、戦略、渉外などの工程は俗人的、場当たり的に運営されていませんか。
しかし前稿で説明したように、これら非定常業務のほとんどが最終決定者である社長の目の届く範囲にある
ため、社長が統一感を持って適正に対処、指示している限り、大きな問題ではありません。問題が顕在化したら規約を追加するなどして、再発防止に努めれば良いでしょう。
4.中小製造業の問題3:認知度が低い
大企業の中でも消費財を製造・販売している会社は、多くの人が製品に接しているために知名度が極めて高いものです。それに比べると産業財を扱っている会社は、一般人に対する認知度がやや下がりますが、それでも産業に対する影響度が高くメディアに取り上げられる機会も多いために、中小製造業よりは認知度が高いものです。
中小製造業の中にも著名な消費財を自社ブランドで販売している例が食品や趣味製品などにありますが、全体としては少数派です。中小製造業は大企業に対して部品・材料を納入するケースが多いため、一般人には馴染みが薄いということになります。
一般人が知らなくても業界内で知られていればまだ良いのですが、限られた相手先とのビジネスしかやっていないと、折角高い技術・生産力を持っているにも関わらず業界内ですら「知る人ぞ知る」存在で、新規受注する時に不利な状況に陥ることになってしまいます。
また人手不足や業務拡大で新規採用する場合にも、「知っている会社」に対して「知らない会社」は立場が弱くなります。問題点1で挙げたように資金が少ないために給与水準が低いことが多く、問題点2で挙げたように福利厚生の仕組みも整っていないために、人材採用は三重苦を負う大きな課題です。
以上は一般論であり、当てはまらない会社も存在します。
そしてアメリカの哲学家ジョン・デューイが言ったように、「問題が明確になれば、半分は解決したようなもの」であり、問題には必ず解決策があるものです。
それについては次回以降考えてまいります。
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