中小製造業の技術経営(その2 大企業との違い)
1.中小企業の定義
前稿でも書きましたが、中小企業基本法による中小企業の定義は「資本金3億円以下または常時使用する従業員数が300人以下」です。
中小企業は税制度や補助金などの優遇があるため、税負担の軽減優遇を受けられるように元々の非中小企業が減資するケースもあって、この定義には問題もありそうですがここでは議論しません。
ここから生まれる中小製造業の特徴を以下に列挙していきます。
2.中小製造業の特徴1:従業員数が少ない
前項の定義そのものずばりであり、従業員数が少ないことでカバーできる業務範囲が狭くなって、例えば知財や法務関連などの専門部署があることは稀で、専任の担当者すらいないことが多いものです。専門関連業務自体が少ないわけですから、弁理士、弁護士など社外への業務委託が効率的です。
経理や人事は中小規模でもそこそこ業務があるので専任者を配置している会社も多いですが、こちらも税理士や社労士を上手く利用して、会社特有の情報やノウハウは社内に蓄積し、一般的な業務を外部に委託する工夫も有効でしょう。
通常の中小製造業では、購買、製造、販売が付加価値発生プロセスですから、ここは徹底的に社内で独自に改善を進めて競争力を上げる必要があります。独自製品を扱う会社では、これらに加えて企画、開発、設計、マーケティング、営業、広報などもメインプロセスとなり、外部の力も借りつつ内部にノウハウを蓄積することが重要です。
従業員が少ないことは悪いことばかりではありません。一人の責任範囲が広くなり、多くの業務を経験することで、会社の全体状況を把握している社員の比率が高まります。それでなくても社長や取締役と日常的に接する機会が多いため、会社方針が浸透し全社員が同じ方向に進みやすく、軌道修正も比較的容易でしょう。
3.中小製造業の特徴2:財務基盤が弱い
資本金が少ないからと言って必ずしも資金が少ない事にはなりませんが、大企業に比べると投資に使える絶対額は少ないものです。現状を維持するだけなら問題ありませんが、新規事業を立ち上げたり、生産性を上げるには、設備や開発者の人件費などの資金が必要になります。
それを打開するために第1項に書いた補助金などがあるわけですが、それはあくまで補助的な手段であり、投資が必要になった時のために、平常時から利益が残せる価格、販売戦略をとっておくことが重要です。
4.中小製造業の特徴3:社長の影響力が大きい
第2項とも関連しますが、中小製造業では従業員が少ないことで、渉外、新企画、広報、特別プロジェクトなどの非定常業務を社長自らがリーダーとなる、あるいは自分で完結してしまうということが多々発生します。
中小製造業の社長は創業者だったりその子息だったりで、長期間トップに君臨することが多いため、社内状況を良く知り決裁権も持っていて、いちいち計画書や稟議書を作らなくても即断即決できるため、器用な(経営能力の高い)社長の場合は非常に素早い活動が可能です。
その一方社長の行動にブレーキをかける人がいないと、客観的に誤っている判断でも暴走してしまうリスクもあり、この件に限らず社長の能力とキャラクターが業績に大きく影響するのが特徴です。
中小製造業の特徴4以降はまた稿を改めます。
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